トランジスタ・スタジオは、Houdiniの前身であるPRISMS時代からの、長きにわたるHoudiniユーザである。Houdiniは、映画やコマーシャル、プロモーションビデオといった、彼らのVFX作品において常に重要な役割を担ってきた。

先ごろトランジスタ・スタジオは、作曲家でありピアニストである、Hidetake Takayama氏とともに、彼の作曲作品である“Express”のCGアニメーションビデオを制作したが、このプロジェクトはただでさえ目まぐるしいスケジュールの中で完成させなければならなかった。Houdiniにより、このスポットアニメーション制作に必要な総工数を最小限に抑え、多様なショットのルック間で調和を保つことができたうえ、何よりも、厳しいスケジュールにもかかわらず、彼らのクリエイティブなアイディアをふんだんに盛り込むことに成功した。

水のオーケストラ

“Express”では、水滴から成る弦楽三重奏団、すなわち水のオーケストラが美しい音楽を奏でるショットにおいて、流体ベースのビジュアルエフェクトがストーリーを語るうえで重要な役割を果たした。

水のオーケストラについては細部に至るまで、不必要な飛沫が発生していないか、うるさすぎる演出になっていないか等の細心の注意が払われ、フルイドの物理的な正確さよりも見た目の美しさが優先された。

Houdiniのサーフェスオペレータ(SOP)やダイナミックオペレータ(DOP)を用いて、物理的に正確なシミュレーションを超越し、水のオーケストラのアーティスティックな演出をじっくり行うことができた。オーケストラのキャラクタから滴り落ちる水滴の表現に際しては、Particle Fluid Surface SOPを使用してメッシュを構築した。

また、水のオーケストラのベースモデルとなるポイントクラウドは、主にDOPのシミュレーションキャッシュやScatter SOPなどで生成された。直感的にポイントを扱うことのできるオペレータもさることながら、ポイントのアトリビュートにアクセスする際、VEXオペレータ(VOP)が大いに貢献した。

水のオーケストラの体内を巡るパーティクルの軌道は、その場しのぎ的な技法ではあるが、CombSOPで体内のポイントクラウドに直接描かれた。その法線を速度ベクトルに変換してトランスファすることで、パーティクルの軌道を手で描くことができる。そのパーティクルをTスタンスのキャラクタから発生させ、思い通りの動きに追従させるために、FBXでインポートしたボーンでデフォームした。スキンのキャプチャにはAttribute Transfer SOPが活躍した。

「我々は使用経験から、他のソフトウェアでは表現不可能と思われることが、Houdiniで実現できることをあらかじめ知っていたので、Houdiniが我々のビジュアルエフェクトパイプラインの中心的役割を果たすのは当然のことでした。」トランジスタ・スタジオでディレクターを務める秋元 純一氏は述べている。

Alembicの優位性とトランジスタ・スタジオのパイプライン

これまでHoudiniは、トランジスタ・スタジオにおいて、独立したツールとして使用されていたが、以前はFBXやMDDファイルフォーマットでの対応が必須であったプラットフォーム間のデータ移行に、新しいAlembicファイルフォーマットを用いることで、パイプラインで使用している他ツールとの接続が格段に容易になり、その結果、ツール開発も楽に行えるようになった。

「特に、開発予算の少ない中小の制作会社においては、Alembicの優位性が十分に発揮できると考えられます。」秋元氏は話す。

レンダリング

「Mantraのすばらしさは、レンダラ―がプロシージャルな処理を行ってくれることに加え、レンダリング時にアトリビュートが反映されることです。」秋元氏は述べている。「大規模シーンにおいて、他のレンダラ―では処理が難しい膨大なデータを、Mantraで容易に扱うことができます。」

CGによるアニメ的ルックの制作

「日本でこのようなルックが流行っているのかどうかは分かりませんが、昔に比べてアニメーション作品の制作に、CGツールが幅広く用いられるようになっていることは事実です。」トランジスタ・スタジオでディレクターを務める森江 康太氏は話す。

もちろん従来のアニメーションの場合、一つ一つのフレームを手で描かなければならず、必要なアーティストも膨大な数になる。それに対してCGアニメーションは、ほぼ自動的にキーフレーム間が補間される。

「説得力のある絵コンテからポーズを取ることができれば、ごく少人数のアニメータでもクオリティの高いアニメーションを生成することができます。」森江氏は言う。「また、背景を3Dにすることで奥行き感や空気感を表現することができるのも、CGで制作する上での利点であると思います。」

高まるHoudiniへの期待

トランジスタ・スタジオは長年のHoudiniユーザとして、Houdiniの日々進化する他のソフトウェアツールとの互換性や柔軟性、優れたレンダラ―、新しいバージョンのリリースのたびに実現される技術的な進歩などといった優位性から、今後のプロジェクトにおいてHoudiniの存在がさらに拡大していくことを期待している。