初代スーパースノークロス(SSX)は大成功を収めたゲームだが、エレクトロニック・アーツ(EA)は、この名作を蘇らせる時期が来たと判断した。12年前の初代作品には、10〜15のスノーボード用コースが収録されたが、この最新作には、世界中の27の名峰から156という途方もない数のコースが収められることになった。

厳しい時間的制約のもと、こうした非常に複雑な環境を制作するにあたり、EAはHoudiniを使用することでゲームを全く新しいレベルにまで引き上げた。Houdiniにより、新たなスタッフをかき集めなくても、わくわくするような面白いゲームを作り上げることに成功した。

「革新をもたらすためには、既存の手法では実現不可能なことを求めなければなりません。」SSXのクリエイティブ ディレクターであるトッド・バッティ氏は言う。

コンテンツ開発の全く新しい考え方

「SSXの制作にあたり、私たちは新たなツールやパイプラインの開発を行っただけではなく、コンテンツ開発に対する全く新しい考え方を取り入れました。」EAでCGスーパーバイザーを務めるケレイヴ・ハワード氏は言う。「当初、Houdiniのプロシージャルパラダイムは、SSXの大半のスタッフにとって目新しいものでしたから、それまでのプロジェクトの考え方から脱却する必要がありました。」

彼らはHoudiniを使い、Mountain Manというパイプラインツールを構築した。これは、衛星地図データを利用して、スノーボード用のダウンヒルコースの生成を可能にするものだ。さらにHoudiniを用いて、コース背景に精確なコンテンツの配置が行える環境コンテンツパイプラインを作成した。Houdini Development Kitのオープン性が、このパイプラインを実現可能なものにするうえで、重要な役割を果たした。

ダウンヒルレース用コースの作成に使われる地形イメージ

 

ケイレヴにとって、ゲーム開発にプロシージャル技術を応用するうえで重要なのは、その柔軟性だ。「Houdiniのおかげで、他のどのソフトウェアパッケージや開発基盤を使ってもなし得なかったことが実現できました。つまり、アーティストが積極的に関わりながら、ツールやワークフローをインタラクティブに開発し、迅速に実装することができるのです。」

Houdiniにより、EAのアーティストは独自のツールをデザインし、改良を加え、現場で機能しないものについては切り捨てながら、使えるもののみを実装していった。ワークフローが立証されると、より経験豊富なツール開発者が加わり、HDKを用いてツールを最適化し、全般的なユーザエクスペリエンスの向上が図られた。

Mountain Manのパイプライン

SSXを制作するにあたり、EAは、必要なコースを作るための足がかりとして、現実の地形データの活用を試みた。Mountain Manパイプラインは、NASAの資源探査用将来型センサ(ASTER)プロジェクトにより収集された、デジタル高度マップを使って地形解析を行い、それをもとに、さまざまなダウンヒルコースをプロシージャルに投影した。

Mountain Manツールは、まず2DメッシュをNASAのデータをもとに山の高さに持ち上げ、さまざまな最適化データ表現を徐々に用いて、最終的にボリューメトリックデータセットが構築した。2次元多様体から、Houdiniのボリュームプリミティブへ、それから階層構造の持つボリュームプリミティブ、そして最後に、非均一のポイントクラウドで表されるようになった。

ポイントクラウドブーリアン

 

完成したコースについては、自動的にテストが実施された。「バックエンドの弾道ライブラリからソースコードを取り込み、サーフェス操作に使用しました。」ケイレヴが説明する。「これにより、ゲーム内でのプレイヤーの動きを定義する実際のコードを使って、プレイヤーが一定範囲の速度で斜面を滑走した時に想定される軌道を視覚化することができました。」

階層構造ボリューム

 

Mountain Manにより、EAは、本来なら手作業でモデリングしなければならなかったコースのデザイン作業の自動化を実現した。これによってチームは、必要なコースを驚くほどの速さで作り上げることのできる無限の可能性を手にしたのだ。

SSXでプレイヤーが滑ることのできる、実際の山の詳細モデル

環境コンテンツパイプライン

コースデザインが終わると、環境コンテンツパイプラインを用いて、それぞれの地形タイプに適した視覚的要素の配置が行われた。このパイプラインは、主にHoudiniを使って構築されたもので、プロップのインスタンス配置に加え、地形メッシュデータの生成が含まれている。

基本的に、このツールは、地形の分析結果や既定のルールに基づいて、樹木や大きな岩の配置を決めるために使用されるシステムだ。

地形分析には、デザイナが作成した既存のコントロールのほか、異なる種類のオブジェクトの配置を管理するルールも織り込まれた。レベルデザイナは、たとえば障害物回避挑戦などのイベントのために、多くの樹木を分布させる区域の指定などを行い、その後、ツールによって、生育条件に見合う樹木がルールを踏まえて決定され、配置された。

環境コンテンツパイプラインでの迅速なプロトタイピング

 

環境コンテンツツールは、Houdiniの強力な基盤である数式によるオーサリング機能を最大限に活用、近接距離や傾斜角を測定し、ペイントによる密度や樹木の成長アトリビュートといったサーフェスアトリビュートに結び付けるように作られた。付加価値として、レベルデザイナは、ツールの根底にある数学的な原理について理解する必要がないため、地形の精度を高く保ちながら、思い通りの自由な制作作業が行えた。

コースに順備的ルールと大まかなコントロールがすべて適用されると、レベルデザイナは、Houdiniのインタラクティブビューポート上のハンドルを通して一連のツールを使い、樹木の再配置を1本1本行うこともできた。短時間で広い面積を進み、木を1本ずつ新たな位置へと移動したり、向き、種類、大きさ、樹勢を変えていくことができた。こうした樹木はゲームエンジンではランタイムにインスタンスされるのだが、このツールにより、ゲーム同様のアセット表示がHoudini内でも行えた。出力時には、定義のためのメタデータのみがゲームエンジンに直接読み込めるフォーマットで出力され、テストプレイを迅速に実行することできた。

プロジェクトの成功

Houdiniをこのプロジェクトのプロダクションツールとして採用することにより、EAは、自動分析ツールとアーティスト主導のデザインツールを併用し、多量のコンテンツを制作する新たな手法を見出した。Houdiniのワークフローの核であるプロシージャル技術を用いて、チームは無事、壮大なスケールのプロジェクトを全うすることができた。

2012年に発売されたSSXは、他に類を見ないほどのクオリティの高さにより、大きな目標を無事達成した。SSXはプレイヤーの夢を実現する作品となった。